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労働関係

★会社が退職従業員のために運用する年金制度の加入者らが、会社が年金支給額を減額したのは無効として、減額部分の返還及び将来の支給を求めた請求が棄却された事例 (大津地裁平16・12・6判決・判例時報1892号62頁)

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★採用内定取消が無効と判断された事例 (東京地裁平16・6・23・判例時報1868号139頁)

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★営業課長が債権回収手続を怠った結果会社に約800万円の損害を与えた事案において、会社のなした懲戒解雇が無効とされ、会社の営業課長に対する損害賠償請求は損害額の約4分の1の限度で認容された事例 (東京地裁平15・10・29判決・判例タイムズ1146号247頁)

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★会社が退職従業員のために運用する年金制度の加入者らが、会社が年金支給額を減額したのは無効として、減額部分の返還及び将来の支給を求めた請求が棄却された事例 (大津地裁平16・12・6判決・判例時報1892号62頁)

【事案】

 本件は,松下電器産業株式会社(以下「Y」)が退職者を対象として運用する福祉年金制度において,同社が平成14年に行った年金支給額の減額が違法,無効であるとして,同年金制度の加入者(Yの退職者)3名(以下「Xら」)が減額部分の支払いと将来の年金の支払い(減額前の金額)を求めて提訴した事案です。
 被告は,昭和41年1月21日に,退職者を対象とした福祉年金制度(以下「本件年金制度」)を創設して運営してきました。本件年金制度は,退職者の希望により預け入れられる退職金の一部を原資(以下「預り原資」)として,一定の支給期間(満80歳までなど)にわたって,預り原資の取崩分と預り原資残額に一定の利率(以下「給付利率」)を乗じた利息相当分を合計した金額を年金として支給する基本年金と,基本年金完了後から加入者の死亡まで一定額の金額を年金として支給する終身年金とからなっていました。なお,加入者は,支給期間中も一方的に自由に預り原資残額の全部または一部を引き出すこともできる制度でした。
 本件年金制度創設後,昭和59年及び平成8年の労使交渉において,預入限度額(退職金の何パーセントか),支給期間及び給付利率についての取り決めがなされてきましたが,本件年金制度の給付利率は昭和41年の創設以来,常に各種市場金利と比較して最も高い水準で設定されてきました。そして,平成14年の労使交渉において,以後の退職者に対しては本件年金制度を廃止し,市場金利連動型の「キャッシュバランスプラン」を導入しました(終身年金も廃止されています)。
 Yは,平成14年に,社内規定である福祉年金規定(以下「年金規定」)23条「将来,経済情勢もしくは社会保障制度に大幅な変動があった場合,あるいは法制面での規制措置により必要が生じた場合は,この規定の全般的な改定または廃止を行う。」を根拠に平成14年9月21日支給分以降の年金支給額を,原稿の給付利率から一律2パーセント引き下げて算出した金額に減額する改定をしました。加入者全体の約95パーセントがこの改定に同意したとのことです。
 争点は主に年金規定23条に基づく改定の適否ですが,@年金規定に拘束力があるか,A年金規定23条をどのように解釈するか,B本件改定が同条の要件を充足するかが問題となりました。

【判旨】

 判決は,@年金規定は加入者に配布されていたものではないが,本件年金制度の加入者はいずれもYに15年以上勤続した従業員であり,年金規定の内容はあらかじめ認識しうる状態にあったと認められるなどの理由から年金規定に拘束力を認め(Xらのいわゆる約款理論の主張を排斥し),A本件年金制度は多数の加入者に対する長期的・継続的な年金給付を内容とし,その福祉的見地から利息相当分にかかる給付利率は常に一般の金融市場と比較して最高水準で定められているなど,加入者に極めて有利な長期的,継続的な給付という本件年金制度の性質やその支給にかかるYの負担に鑑みると,Y自身の業績等が当初に予測された範囲を著しく下回って悪化した場合には,本件年金制度が破綻するおそれがあるため,運営者たるYにおいて各加入者の同意の有無に関わりなく,合理的裁量の範囲内で年金規定の内容を改定し,各加入者との間の年金契約の内容を一律に変更することを許容しているものと解されるとし(Xらの消費者契約法10条の主張及び「経済情勢の大幅な変動」にはY自身の経済状態の変動は含まれないという主張をいずれも排斥し),B被告の業績は平成8年の労使協定当時の予測を著しく下回って悪化したと認められ,現役従業員に対しては本件年金制度の廃止を含む退職金・年金制度の抜本的な改革が行われ,従業員や取引先にコストダウン施策への協力を要請し,株主への配当減少も余儀なくされているなどの状況から,本件年金制度の給付利率の引き下げの必要性があり,本件改定後の給付利率が市場金利や同業他社等の企業年金制度に照らしても相当程度高い水準となっており,加入者全体の95パーセントが既に改定に同意していること,加入者の生活に深刻な影響を与えるほどの減額ではないことなどから給付利率引き下げの相当性も認められるとし,本件減額の改定は有効であり,Xらの主張をいずれも退けました。  なお,Xらの求めていた将来給付(減額前の金額)のうち,減額後の金額分については,Yが減額後の金額で支給を継続していたこと及びYの本件訴訟における態度に鑑み,将来的にも減額後の金額の支給は期待しうるので,将来請求の必要性を認めず却下しています。
 Xらは控訴し,現在大阪高裁で審理中です。

【解説】

 本件年金制度は,@給付利率が市場金利と比べて非常に高く運用されてきたこと,A給付期間終了後(預入れ原資取崩後)も終身年金が支払われること,B給付期間中も預入れ原資の残額を自由に全部または一部引き出すことができることの点からして,加入者に非常に有利な年金制度だと思われます(一般消費者から苦情が出るほどだったようです)。現在(厳密に言えば平成14年当時ですが)の経済情勢を考えれば,本件程度の減額はやむを得ないのではないかと思われます。仮に本件程度の減額もできないとなると,このような年金制度は,「創設の当初から将来のあらゆる可能性に備えて」「給付水準を低く抑えて設定する」ほかなくなり,結局「加入者に対して利益にならないのは明白である」とする判旨には説得力があると思います。
                


★採用内定取消が無効と判断された事例 (東京地裁平16・6・23・判例時報1868号139頁)

【事案】

 XはIT関係の開発製造販売を業とするA社に勤務していたが,転職を決意し,平成15年5月28日,コンピュータの周辺機器の設計等を業とするY社の入社試験を受けた。Y社は同年6月16日,Xに対し,採用内定通知を出した。ところがY社は同月27日になって,Xに対し,Xに悪い噂があるとの理由で,採用内定を留保し,人事担当者Bに噂の真偽を調査するように命じた。BはA社を訪問するなどしてXに対する噂の真偽を調査したが,A社は噂を否定した。そこで,Y社はA社からXに問題はないとの書面を提出してもらった上で,再度,社長等がXと面接し,改めてXに対して採用するとの内定通知を出した。ところが,Y社は同年7月10日,再度前記同じ悪い噂の存在を理由に,採用内定を取り消した。そこで,XはY社に対し,採用内定取消は理由がなく無効であり,労働契約は成立していたとして,債務不履行に基づき未払給料相当分の金銭と慰謝料等の支払を求めて訴えを提起した。

【判旨】

 本判決は,まずXとY社との間には始期付解約権留保付労働契約が成立していたと認定し,かかる場合においてY社の解約権行使が客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる事由がある場合には,当該解約権行使は適法であるが,そのような事由が存在しない場合は,当該解約権行使は無効であり,XとY社との間に労働契約は継続しており,また解約権行使が違法として解約権行使に伴いXが被った損害をY社は相当因果関係の範囲内において賠償する義務を負うとした上で,以下のように認定してY社に損害賠償の支払いを命じた。すなわち,Y社がXの採用内定を取り消す根拠になった悪い噂とは,XのA社勤務時代において@勤務態度等に問題があること,A空売りがあること,B客先とのトラブルがあったこと,C協調性を欠くXの性格がA社内で問題視されていたこと,D退職に至る経緯が不明瞭であることであるところ,いずれについても上記各事実を認める証拠はなく,それ故Xの解約権行使は濫用であると判示した。なお,損害額については省略。

【解説】

 採用内定の取消については,客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる理由がある場合のみ許されるとされていますが(大日本印刷事件−最二判昭54・7・20民集33・5・582),本判決もこの基準に従って判断しております。問題はどのような理由があれば内定取消が許されるかですが,本件のY社はXの悪い噂として,前記@ないしDを挙げていました。しかし,Y社の担当者BがXの勤務態度等についてA社に調査したところ,@についてはA社から具体的事実を挙げながら書面で問題はなかった旨回答を得ており,またAについても空売りとはいえず違法なものではなく,Bについても,この件でXがA社から何らかの責任追及を受けているという事情はありませんでした。さらにCについても,A社内でXの性格等が社内的に問題になっていたというような事情はなく,D退職の経緯にも問題は認められなかったため,内定取消の理由とはならないと判断されました。
 裁判所は労働者からの内定取消と比べると,使用者からの内定取消については従来から厳しい態度を取ってきました。例えば,採用内定通知書ないし誓約書における「提出書類への虚偽記入」についても,虚偽記入の内容・程度が重大なもので,それによって従業員としての不適確性あるいは不信義性が判明したことを要するとしてきました(日立製作所事件−横浜地判昭49・6・19)。本件もこの流れに沿うものといえます。本件では採用内定通知を出した平成15年6月16日以降に悪い噂が判明したわけですが,仮に面接の際には明らかにならなかったXの従業員としての不適格性をY社が証明できれば内定取消は許されたのでしょうが,前記のとおりそのような証明はありませんでした。事例判断ではありますが,今後の労働実務に参考になる裁判例として紹介させていただきました。


★営業課長が債権回収手続を怠った結果会社に約800万円の損害を与えた事案において、会社のなした懲戒解雇が無効とされ、会社の営業課長に対する損害賠償請求は損害額の約4分の1の限度で認容された事例 (東京地裁平15・10・29判決・判例タイムズ1146号247頁)

【事案】

 XはYに30年以上勤務する従業員でしたが,平成14年5月31日,Yに対し,同年6月10日付けで退職するとの申し入れをしました。ところが,Yは,その6日後である同年6月6日,Xを懲戒解雇するとの意思表示をしました。その理由は,Xが顧客に対する請負代金請求を怠った結果,Yは800万円以上の債権が回収不能になったとして,Xの勤務態度が懲戒解雇事由である「再三注意したにも拘わらず業務に対する熱意誠意がなく怠慢な者」に該当するというものでした。
 そこで,Xは,Yに対し,退職金等の支払いを求めるとともに,Yの行為により精神的損害を被ったとして慰謝料300万円の支払を求めて提訴しました。これに対し,Yは,上記の回収不能金額の損害の賠償を求めて反訴を提起しました。

【判旨】

 判決は,本件懲戒解雇を無効とした上で,Yに対しては,退職金等の支払及び慰謝料200万円の支払を命じ,Xに対しては,回収不能金額の約4分の1である200万円の支払を命じました。
 理由としては,請求書未提出が発生したのはXに対する過重な労働環境にも一因があること,債権回収不能額の約1割は価格交渉での通常の値引額と考えられること,Y自身が今後の取引関係への影響等を考えて値引きに応じたことも債権回収不能の一因となっていること,XはYに長期間勤務しており,その間に一度も懲戒処分を受けたことがないこと,Yでは3年前にも本件と同様の事件が起きているのに,再発防止に適切な体制をとっているとは言いがたいこと,債権回収不能の事態が発生したのはXの上司にも責任があること,それにもかかわらずXの上司は何らの処分も受けず,かえって昇進していること,Xが退職した場合の退職金額は本件回収不能額を約500万円も上回っていること,YはXに対し同人の意思を無視して退職金で債権回収不能債権を弁済(相殺)するように要求したこと(労基法違反)などを挙げています。

【解説】

 今回のような事案で,会社側が従業員を懲戒解雇して退職金の支払を免れることができるか,更に,従業員に対し損害賠償請求をすることができるかについては,従業員の任務違反の程度,使用者側の管理体制,従業員の置かれている状況等を総合的に考慮して判断されるものだと思われます。  本件においては,Xに請求書未提出等の任務違反はあったものの,上記の判決理由のとおり,債権回収不能の責任は会社や上司にも認められ,X側に酌むべき事情もあったことから,懲戒解雇は解雇事由に該当しないか少なくとも解雇権の濫用により無効,会社からの損害賠償請求は約4分の1の限度で認める,という結論になったようです。
 また,本件のポイントとして,(YがいつからXの懲戒解雇を検討したかは不明ですが)Xが退職を申し入れた直後に,Yが懲戒解雇の意思表示をしていることから,退職金の支払を免れる目的で強引な懲戒解雇を断行したという印象が拭えないことも指摘しておきます。
                




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