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不法行為・交通事故

★交通事故による後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効が遅くとも症状固定の診断を受けた時から進行するとされた事例 (最高裁平16・12・24・判例時報1887号52頁)

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★交通事故による損害賠償について,既払金のほか1480万円を支払う旨の和解の成立後,自賠責保険から224万円が支払われたことが判明した場合,1480万円から224万円を控除した1256万円を支払う限度で和解が有効に成立したとされた事例 (神戸地裁明石支部平16・5・28・判例時報1869号75頁)

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★強制わいせつの被害者についてPTSDの発症を認め逸失利益の損害賠償請求等が認容された事例 (旭川地裁平14・3・12判決・判例タイムズ1169号274頁)

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★中学生間の「いじめ」負傷事故について、加害生徒の親の不法行為責任が認められた事例 (埼玉地裁平15・6・27判決・判例時報1849号71頁)

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★弁護士に関するルポルタージュの中の記載について弁護士に対する名誉毀損の成立が認められた例 (東京地裁平15・12・17判決・判例タイムズ1176号234頁)

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★裁判官個人に対する損害賠償請求訴訟における裁判官提出の「因縁をつけて金をせびる」という記載について、名誉毀損の成立が認められなかった事例 (東京高裁平16・2・25判決・判例時報1856号99頁)

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★交通事故による後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効が遅くとも症状固定の診断を受けた時から進行するとされた事例 (最高裁平16・12・24・判例時報1887号52頁)

【事案】

Xは、平成8年10月14日、Yの過失による交通事故で負傷し、これが原因で右膝の神経症状等の後遺症が残り、治療を受けていたが、平成9年5月22日に症状固定との診断を受けた。そこで、Yは自賠責保険に後遺障害等級の認定を請求したところ、自算会(現在は損害保険料率算出機構に改組)から後遺障害非該当との認定を受けた。Xは直ちに不服申立をしなかったが、約2年が経過した平成11年7月になって異議申立てをしたところ、後遺障害等級12級12号(局部に頑固な神経症状を残すもの)との認定を受けた。そして、Xは、それから更に1年9か月後である平成13年5月、Yに対し上記後遺障害に基づく損害賠償を求める本件訴訟を提起した。しかし、Xが本件訴訟を提起した時点では、症状固定時から3年以上が経過していたため、Yが消滅時効を援用した。

【判旨】

本判決は、Yは、本件後遺障害につき、平成9年5月22日に症状固定という診断を受け、これに基づき後遺障害等級の事前認定を申請したというのであるから、Yは、遅くとも上記症状固定の診断を受けた時には、本件後遺障害の存在を現実に認識し、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害の発生を知ったものというべきものと判断し、上記症状固定時を消滅時効の起算点とした。

【解説】

本件は交通事故による損害の中でも、特に後遺障害に基づく損害賠償請求権が消滅時効しているのかどうかが争われた事案です。
消滅時効を規定している民法724条は、被害者が「加害者及ビ損害ヲ知リタル時」から進行すると規定していますが、判例はこの意味を被害者において加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度に加害者及び損害を知った時を意味するとされており、損害を知ったというためには、損害を現実に認識しなければならないとしています(最三判平14・1・29)。
本判決も、この従来の判例の枠組みの中で消滅時効の起算点を判断しており、上記【判旨】で述べたとおり、Yは平成9年5月22日に症状固定したとの診断を受け、これに基づいて後遺障害等級の認定を申請していた点を重視して、症状固定時を消滅時効の起算点と認定しました。
この点、本件の特殊性として、Yは後遺障害等級の認定を申請したものの、「非該当」との認定を受けたため、Yが実際には後遺障害に基づく損害賠償請求権を行使できなかったのではないかという点です。原判決(大阪高裁)もこの点を重視したものと思われます。確かに、後遺障害等級の認定請求に対して「非該当」と回答されながら、それでも損害があったものとして損害賠償請求を行うのは非現実的であるようにも思えます。しかし、この点について本判決は「自算会による等級認定は、自動車損害賠償責任保険の保険金額を算定することを目的とする損害の査定にすぎず、被害者の加害者に対する賠償請求権の行使を何ら制約するものではない」としています。実際、裁判実務においては自算会の等級認定と異なる判断がしばしばなされることを考えれば妥当と思います。
なお、本件ではXの消滅時効の抗弁に対して、Yは消滅時効の援用が権利の濫用に当たるとの再抗弁を主張していたため、この点について更に審理を尽くさせるために原審に差し戻しています。


★交通事故による損害賠償について,既払金のほか1480万円を支払う旨の和解の成立後,自賠責保険から224万円が支払われたことが判明した場合,1480万円から224万円を控除した1256万円を支払う限度で和解が有効に成立したとされた事例 (神戸地裁明石支部平16・5・28・判例時報1869号75頁)

【事案】

Xは、有限会社の代表者であるが、平成8年5月3日、国道を自動二輪車(被害車)で走行中、路外のガソリンスタンドに入るため左折進行してきたYの運転する普通乗用自動車(加害車)に衝突され、右肩関節脱臼骨折等の傷害を受け、平成11年9月1日までB整形外科等に入通院して治療を受けた。
原・被告間の交渉の結果、平成13年12月13日、本件事故につき、Yは既払金のほか1480万円を支払う旨の和解契約(以下「本件和解契約」)が成立したが、その後、Yは本件和解契約の成立の際、自賠責保険からの224万円の支払を看過していたとして1256万円しか支払わなかったため、Xは平成14年8月、本件和解契約を解除した。そこで、XはYに対し、自動車損害賠償法3条に基づき、休業損害1678万6849円、逸失利益1690万9200円、慰謝料800万円など既払金882万3719円を控除した合計4528万7862円の損害賠償を請求した。

【判旨】

本判決は、(1)本件和解契約はXが自賠責からも224万円の支払を受けていたという事実を看過して成立するに至ったということができ、Yがそれを認識していれば最終的な示談金額1480万円での合意に至ったということができないから、本件和解契約には要素の錯誤があるというべきである、(2)しかし、Xが最終的に支払を受ける総損害額についての認識はX・Y間で一致しており、その一致した認識のもとに本件和解契約に至ったのであるから、本件和解契約の効力を全体として否定することは相当ではなく、無効とされる範囲も、前記1480万円のうち224万円に限定した一部と解するのが相当である、(3)本件和解契約は、1480万円から224万円を控除した1256万円をYがXに支払うという限度で有効に成立したと評価すべきところ、YはXに対して1256万円を支払ったのであるから、本件事故に関し、XとYとの間には何らの債権債務はない、などと判断し、Xの本訴請求を棄却した。

【解説】

本件と類似の事案として、東京地判昭45・3・11(時報603号67頁)は、交通事故による損害賠償請求事件で、既払金のほかに400万円を支払う旨の和解成立後に、自賠責保険金206万円が支払われていたことが判明した事案について、和解を錯誤により無効としています。本判決は、本件和解契約を全体として無効とするのではなく、Xが受けた既払金の限度に留めている点が注目に値します。
交通事故による損害賠償額の算定に当たって、被害者が自賠責保険から支払われた金額を考慮すべきという結論そのものについては争いはないものと思われます。しかし、通常示談交渉においては、被害者、加害者双方とも譲歩を重ねた上で示談金が決定され、和解が成立するものです。一旦締結された和解契約が、その後に判明した事情如何によって和解契約が全体として無効となったり、その一部のみが無効となってしまうと、余りにも当事者に不測の損害を与えかねません。本件でも被害者のXからすれば、最終的な示談金額を1480万円とするまでに譲歩をしたはずです。それが相手方Yの錯誤によって、その錯誤が存じた点についてのみ本件和解契約が無効となるとすると、余りにもXに不利な結果となりはしないでしょうか。
いずれにせよ交通事故に関する示談交渉においては、後の紛争を防止するためにも、示談成立後に支払うべき賠償額を明確にすることはもちろんろのこと、被害者が既に受け取った賠償金額を十分に確認しておくことが重要といえます。


★強制わいせつの被害者についてPTSDの発症を認め遺失利益の損害賠償請求等が認容された事例 (旭川地裁平14・3・12判決・判例タイムズ1169号274頁)

【事案】

旭川医科大学の学生であったXが、同大学の先輩であるYから誘われてドライブ中、深夜、人気のない場所で停車した車内で、Yから性行を求められ、これを拒絶すると、陰部に指を入れ、男性器を口に入れて口腔内で射精するなどのわいせつ行為を強要されたとして、Yに対して損害賠償請求をした事案です。
Xは、Yのわいせつ行為によって甚大な精神的苦痛を受け、重度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、大学を卒業したものの、保健婦の資格をとることもできず、軽易な労務や日常生活を送るのが精一杯という状態になったと主張し、精神的苦痛による慰謝料以外に、後遺障害による逸失利益の請求も行いました。これに対し、Yは、Yの行為はXとの合意の上の行為であって、Xの意思に反するものでなく、また、PTSDの結果発生及びXの行為との因果関係を否定し、全面的に争いました。

【判旨】

判決は、本件の事実経過を詳細に検討した上で(Xに婚約者が存在したこと、本件前のX・Yの関係、本件後のXの行動など)、Yの行為はXの意思に反するものであったことを認定した上、XをPTSDと診断したことは相当で、その病状から労働能喪失率35%、喪失期間5年の範囲で後遺障害による逸失利益を認めました(平成11年大卒女性労働者賃金センサスによる基礎収入302万2200円に喪失率35%及び5年に対応するライプニッツ係数(4.3294)を乗じた457万9509円と認定)。

【解説】

一般に後遺障害というと、身体的障害を連想することが多いものですが、「神経系統の機能または精神に障害を残し」た場合には、その程度によって後遺障害の認定がなされます。
PTSDとは、本人もしくは近親者の生命や身体に対する重大な脅威となる心的外傷的な出来事に巻き込まれたことにより生じる障害で、外傷体験が反復的かつ侵入的に想起され、あたかも過去の外傷的な出来事が目の前で起こっているかのような苦痛に満ちた情動を伴う錯覚(解離性フラッシュバック)、孤立感、睡眠障害、外傷体験に類似した状況に暴露されたときに生じる著しく過度の驚愕反応などの症状を特徴とする疾患です。近時、PTSDという言葉がよく使われるようになり、刑事事件や民事事件においてPTSDが問題にされる事案も増えています。
犯罪行為等によって生じた心的外傷は、当然、法的に保護・回復される必要があることはいうまでもありません。しかし、身体的障害と異なり外部から見えるものでなく、現在、診断基準となっているWHOの「ICD−10」とAPAの「DSM−IV」もわかりにくいものであると言われており、診断レベル・法的評価レベルで今後の研究が求められている分野でもあります。
本件においても、PTSDの診断をした医師の証人尋問が行われ、その診断の妥当性・程度の相当性について詳細な検討がなされています。法的評価とともに立証方法の研究も進んでいくものと思われます。なお、本件の最大の争点はYの行為がXの意思に反するものであったかどうかでしたが、これは法律論ではなく詳細な検討を要する事実論であるので、解説は割愛させていただきます。
                 


★中学生間の「いじめ」負傷事故について、加害生徒の親の不法行為責任が認められた事例 (埼玉地裁平15・6・27判決・判例時報1849号71頁)

【事案】

当時中学生であったXが、同学校の生徒A、B及び他学校の生徒C、D、Eから集団暴行を受け、顔面打撲や右肩峰骨折等の傷害を負い、また、A及びBから万引の強要や恐喝等(以下「いじめ行為」といいます。)を受けていた事案です。被害を受けたXは、A〜E(以下「少年ら」といいます。)の両親9名Y1〜Y9(以下「被告ら」といいます。)に対し、500万円の損害賠償を求めて提訴しました。
これに対し、被告らは、(1)本件の暴行は、Xと少年らが口論になったことに端を発したもので、子供の間の一回限りの喧嘩に過ぎない、(2)少年らは事件当時15歳であり、自ら責任を負う能力があったので、被告らが責任を負うことはない等と主張して争いました。

【判旨】

判決は、集団暴行や万引の強要、恐喝等の事実関係を認めた上で、少年らには、いずれも本件暴行事件以前から喫煙、ピアスの着用、粗暴な行為、不良グループの形成等の問題行動が生じていたところ、被告らはこれを認識し、又は認識すべきであったから、少年ら5名が、早晩弱者に対するいじめや暴力行為等に及ぶことをも十分に予見し得たものといえる。それにもかかわらず、被告らは、いずれもその子に対する監督教育等に特段の努力をせずこれを放置し、少年ら5名の上記問題行動を解消させようとしなかった。そのため、少年ら5名の非行傾向は深刻化し、Xに対する本件いじめ行為及び本件暴行事件を惹起させるに至ったものというべきである。従って、被告らには、各少年らに対する監督義務を怠った過失があり、これと5名によって惹起された本件暴行事件(及びいじめ行為)によりXに生じた権利侵害の結果との間には因果関係があるというべきであるから、被告らは、民法709条、719条に基づく不法行為責任を負うものというべきである。」と判示し、いじめ行為も行ったA、Bの両親については400万円を、集団暴行のみを行ったC〜Eの両親については300万円を、それぞれ連帯してXに支払うように命じました。
この判決は、控訴されることなく確定しています。

【解説】

民法709条は、「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」と定め、故意・過失の違法行為によって他人の権利を侵害した者は、その行為と因果関係のある損害を賠償する責任(不法行為責任)を負うとしています。この規定によって、暴行等の違法行為によって傷害等の損害を発生させた者は、その損害を賠償しなければなりません。
また、民法712条は、「未成年者カ他人ニ損害ヲ加ヘタル場合ニ於テ其行為ノ責任ヲ弁識スルニ足ルヘキ知能ヲ具ヘサリシトキハ其行為ニ付キ賠償ノ責ニ任セス」と定め、責任能力なき未成年者は不法行為責任を負わないとしており、民法714条1項は、「前二条ノ規定ニ依リ無能力者ニ責任ナキ場合ニ於テ之ヲ監督スヘキ法定ノ義務アル者ハ其無能力者カ第三者ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス但監督義務者カ其義務ヲ怠ラサリシトキハ此限ニ在ラス」と定め、未成年者等に責任能力がない場合には、両親等の監督義務者が、監督義務を怠っていなかったことを証明しない限り、不法行為責任を負うとしています。要するに、この二つの規定によって、未成年者に責任能力がない場合には、原則として、両親が責任を負うということになります。
そして、未成年者に責任能力があるかどうかは、各事案において個別具体的に判断されるのですが、一般的には12歳前後を基準とするといわれています(もちろん具体的ケースによって変わってきます)。本件では、少年らは15歳であり、特別の事情もないことから、全員責任能力があるとされました。
それでは、未成年者に責任能力がある場合には、両親等の監督義務者は一切不法行為責任を負わないのでしょうか。この点は、民法の条文では明確に書かれておらず、問題となっていました。
学説の中では、このような場合も両親は責任を負うという見解が有力であり、今回の判決も同様の考え方をしています。両親が責任を負うという根拠は以下のとおりです。
確かに条文の書き方からすれば、両親が民法714条の責任を負うことはありませんが、監督義務者の義務違反と未成年者の行為により生じた権利侵害との間に相当因果関係が認められるときは、監督義務者は不法行為の原則条文である709条に基づき責任を負うと解釈します。要するに、「未成年者の行為→権利侵害」という事実をもう一歩大きな視点から考えて、「両親の監督義務違反→未成年者の行為→権利侵害」と捉えることにより、両親も責任を負うと考えるのです。
もちろん、監督義務違反があった場合に、両親が無条件で責任を負うというわけではなく、発生した結果・損害との間に相当因果関係が必要とされています。今回の判決も、少年らに問題行動があったことから、両親は少年らが暴力行為に及ぶことも十分予想できたにもかかわらず、両親らは監督義務を怠り、そのことと被害結果との間に因果関係があると摘示して、責任を負う根拠を明らかにしています。
一般的に未成年者は資力に乏しいことが多く、事件の被害者が損害の賠償を受けるためには、それを資力のある両親に請求する必要があります。未成年者に責任能力がある場合の両親の責任については、民法の条文には明示されていませんが、被害者側の請求の必要性も考慮されて、上記のような解釈が採られており、現在ではほぼ通説化しています。
                


★弁護士に関するルポルタージュの中の記載について弁護士に対する名誉毀損の成立が認められた例 (東京地裁平15・12・17判決・判例タイムズ1176号234頁)

【事案】

Xは医療過誤事件(患者側代理人)で著名な弁護士であり、名古屋における医療事故に関する活動団体の理事長もつとめたこともある。
Aは、元看護士で、前記活動団体が主催した医療被害者を救済するための医療従事者の役割をテーマとしたシンポジウムに参加し、Xのことを知った。後日、AはXのところで無料法律相談を受け、さらに自身の看護婦としての体験に係る手記をXへ送った。その後何回かにわたって、XとAのあいだでこの手記をめぐるやりとりがあった。
約8年後、Yら(ルポライターと出版社)は、『モンダイの弁護士』と題した本を刊行し、その中で「医療事故の闇、弁護士村、その『沈黙の共謀』−−弁護士とは、心の通わない『歩く六法全書』?」というルポを掲載した。
そのルポの中では、やりとりについて取り上げ、「弁護士であるXが、Aに自分の体験を手記に書くように指示し、原稿を受け取りながら、Aに返事をせず、原稿まで紛失し、謝罪もせずに居直った」旨記述した。
Xは、Yらに対し、この記述により自身の名誉を毀損されたとして、Yらに慰謝料300万円を請求した。

【判旨】

判決は、ルポの記述が、Xが不誠実な弁護士であるとの印象を与えるもので、Xの名誉を毀損すると認定しました。その上で、記述内容も真実ではなく(真実性の抗弁の排斥)、取材もAの言い分を安易に信用した杜撰なものだったとして(相当性の抗弁の排斥)、Yらの免責を認めず、Yらに対し300万円の支払いを命じました(確定)。

【解説】

弁護士業務に対して、ルポルタージュの記述による名誉毀損が問題となったという興味深い事例です。本書『モンダイの弁護士』は、様々な弁護士の不誠実なありようを取り上げた本で、結構話題になった本ですが(ちなみに、私も発売後すぐに1冊買いました)、本件のルポルタージュはその巻頭記事で、医療過誤の被害者が今度は頼んだ弁護士に失望していく・・・という大変重いテーマを扱ったものでした。ルポライターのYは、その中で、医療過誤事件において著名な弁護士であるXを取り上げ、主にAから取材した内容にもとづき「弁護士であるXが、Aに自分の体験を手記に書くように指示し、原稿を受け取りながら、Aに返事をせず、原稿まで紛失し、謝罪もせずに居直った」旨記述したわけです。
判例上、事実を適示しての名誉毀損では、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、適示された事実がその重要な部分について真実であるとの証明があったときには違法性は無く、また、事実の重要な部分を真実であると信じるについて相当の理由があれば、免責され、いずれも不法行為は成立しないとされています(いわゆる「真実性」「相当性」の抗弁)。
本件のYらのルポでは、Xの方からAに手記をまとめるよう持ちかけたことを前提に、「人に手記を書かせておきながら、その原稿をなくし」「しかも、謝罪の言葉は一つもなく」といった記述があったのですが、その前提自体が真実ではない(Xの方から持ちかけたのではなく、Aが一方的に送付した)と認定され、その他の点もYらの抗弁は認められませんでした。(★但し、Xは電話だけで返事をせず。。。)また、請求額である300万円の満額の支払いが認められており、近時の名誉毀損の慰謝料の高額化の流れを示すものとして、興味深い判決だと言えます。


★裁判官個人に対する損害賠償請求訴訟における裁判官提出の「因縁をつけて金をせびる」という記載について、名誉毀損の成立が認められなかった事例 (東京高裁平16・2・25判決・判例時報1856号99頁)

【事案】

原告は、高校の教師であり、群馬県などを相手に損害賠償請求訴訟(別件訴訟)を提起した。この訴訟を担当した裁判長は、原告からの期日変更の申立を却下し、弁論を終結して即日判決を言渡した。こうした裁判長の訴訟指揮が違法であるとして、原告(及び訴訟代理人の弁護士1名)が国とこの裁判官を相手に国賠訴訟・損害賠償請求を提起したところ、裁判官は答弁書において「本件訴訟は、裁判所の適法な訴訟活動に対し、因縁をつけて金をせびる趣旨であ」ると記載して、陳述したため、原告はさらにこの行為が名誉毀損であるとしたものである。

【判旨】

原審は、裁判官の訴訟指揮自体は裁判官の権限の趣旨に明らかに背いているとは言えないとしたが、答弁書の記載は名誉毀損にあたるとして、裁判官に対し、慰謝料10万円(1人あたり)の支払いを命じました。ところが、本判決(控訴審)は、名誉毀損の点についても、答弁書の記載が名誉毀損にあたることは認めつつも、訴訟行為として相当性を欠いた表現であるとまでは断定し難いと判断して、原審判決を取消して、請求を棄却しました。

【解説】

裁判官個人を相手とする訴訟における裁判官の答弁書の記載について名誉毀損の成否が争われ、原審、控訴審で判断が分かれた珍しい事件です。
まず、原告側は、裁判の期日指定・期日変更申立却下・口頭弁論終結・判決言渡しといった裁判官の訴訟指揮について、強引であって裁判の「慣行」に反すると主張していたのですが、この点は原審・控訴審ともに認められませんでした。
次に、裁判官を相手にした訴訟の答弁書において、裁判官側は「本件訴訟は、裁判所の適法な訴訟活動に対し、因縁をつけて金をせびる趣旨であ」ると記載して、請求棄却を求めたのですが、この点は、原審が名誉毀損を認めたのに対し、控訴審は、訴訟行為については直ちに名誉毀損として不法行為を構成するものではなく、「訴訟行為と関連し、訴訟行為遂行のために必要であり、主張方法も不当と認められない場合には、違法性が阻却される」と判示した上で、本件の経緯から、「因縁をつけて金をせびる趣旨である」との記述が訴訟行為として相当性を欠いた表現とまでは断定し難いから、違法性は阻却されるとしました。
この点は、「最高裁判所の確定した判決法理により、裁判官の個人責任は否定されていることに照らせば・・・(裁判官に対する)損害賠償請求が認容される余地が全く存しないことは明らかであり、それにもかかわらず、あえて(裁判官個人を)被告として本件訴訟が提起されたことの意味は必ずしも明らかでない。」として、原告側があえて裁判官個人を被告としたことの経緯も考慮されていると思われます。
【まとめ】・・・但し、控訴審判決も「もとより裁判官は・・・裁判や裁判所に対する国民の信頼を傷つけることのないように、慎重に行動すべき義務を負っており、(当該裁判官としては)慎重に訴訟活動をすべきであった」と述べています。




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